『がん(悪性腫瘍)の疑問』 【第二回】 | ほけん知恵袋

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『がん(悪性腫瘍)の疑問』 【第二回】

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公開日:2022-01-31

更新日:2024-04-21

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小川健一

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  経歴:

10年  年間相談件数: 250件

  所属:

株式会社ワールドフィナンシャル 東京第一支社

 取扱い:

生命保険21社 損害保険11社

保有資格:

TLC (生保協会認定FP), 生命保険募集人, 損害保険募集人

皆様にお聞きした「がん」への素朴な疑問、知っているようで良く分からない事etc.

前回の掲載(『がん(悪性腫瘍)の疑問』がんとは?検査方法とは?)に続く第二回目です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・三大治療について
検査の結果でがんと診断された場合、実際に治療方法を決めて(担当医からの説明を受けて了承の上で)治療が開始となります。
がんの部位や進行度合い等にもよりますが『公的医療(保険証で受けられる治療)』によって治療をしていきます。

日本における公的医療は「ガンの三大治療(標準治療)」と呼ばれる
『手術(外科治療)』『薬物療法(主として抗ガン剤・ホルモン剤)』『放射線治療』です。

日本では「診療ガイドライン」という日本癌治療学会と各専門学会によって作成されたものがあり、全国どの都道府県でも均一に治療が受けられることを前提として作成されています。
担当医(医療機関)はこの「診療ガイドライン」に沿って治療を行う事から、例えば
『いきなり先進医療で治療をする』『自由診療を最初から行う』
といったことはありません。

逆にいえば『健康保険制度』や『高額療養費制度』があるので、がんになったとしても多額のお金がなくても治療を受けることが出来るともいえます。

手術(外科治療)
がんや周辺部位を切除する方法で、目的は腫瘍や臓器の悪いところを取り除くことです。

がん細胞は周囲の組織に広がったり(浸潤)、リンパ管や細かい血管に入ってリンパ節や他の臓器に広がったり(転移)していきます。
そのため、一般的に手術では該当部位の臓器を大きめに切除します。手術の際には、手術の痛みを取り除き、安全に受けられるように、麻酔をかけて行います。
また、手術で臓器を切除したことによって正常な機能が失われてしまう場合には、臓器同士をつなぎ合わせるなどの機能を回復させるための手術(再建手術)を行うことがあります。

手術方法としては、
・開腹手術や開胸手術など・・・手術する部位を直接目で見てがんを取り除く方法
・腹腔鏡下手術や胸腔鏡下手術、ロボット支援下手術など・・・体により負担が少ない手法で、
手術する部位を腹腔鏡や胸腔鏡で見ながらがんを取り除く方法。

手術方法が変わってくるにくれ体の負担が減ることにより入院日数は短縮傾向にあり、
開胸手術:平均入院日数27日・開腹手術:20日に対し、胸腔鏡手術及び空腹鏡手術:14日
となってきています。

ダヴィンチといったロボット支援手術は導入費用3憶円、維持費に年間4千万円ほどかかることなどから以前は保険証対象外が多かったのですが、近年はダヴィンチの特許技術が切れたこともあり国産を含めた他社参入によるロボット(例:hinotori)等が登場したこともあり、2018年の診療報酬改定から保険適用となりました。

ロボット支援手術の場合、従来に比べ術後在院日数が短く、周辺リンパ節個数が多く、出血量は少なく、そして合併症が少ないと成績が良い傾向にあります。

また将来的には通信技術の向上もあって遠隔地手術も見えてきています。

薬物療法(化学療法)
薬剤を服用し、がん細胞を攻撃して死滅したりがん細胞の進行を抑えます。
完治(寛解)を目的とするだけではなく延命・症状緩和目的とすることもあります。
抗がん剤治療やホルモン治療、分子標的療法がこれに入ります。

薬の種類(現在で約100種類といわれています)や患者の体質等によっては正常な細胞へも影響を及ぼすものや投与による嘔吐・食欲不振・脱毛・倦怠感などの副作用を伴います。

薬剤の効果や副作用等にもよりますが、「入院治療」と「外来治療(通院)」があります。
近年はピンポイントでがん細胞のみに効果を果たすものが増えてきている事などから、必ずしも入院しての治療ではなく通院治療による場合も年々増加傾向にあります。

従来は肺がん・大腸がん・乳房がんといったがんの部位別に使う薬剤を選択していましたが、
近年『ゲノム検査(がん遺伝子パネル検査)』によって遺伝子変異などのがんの特徴等に合わせて、一人一人に適した薬剤(治療方法)を決める事により、より効果的な治療が出来るようになってきました(個別化治療)。

ただ、検査結果によって必ずしも最も適した薬剤が公的医療の対象外だったり、そもそも最も適した薬剤がまだ開発されていないこともあるのが現状です。

放射線治療
人工的な放射線を患部に照射することで、がん細胞のDNAに損傷を与え、死に至らしめます。
基本的には公的医療の範囲になりますが、重粒子線治療や陽子線治療といった公的医療対象外である先進医療の代表例に挙げられるものも放射線治療の一種になります。

放射線は、『電磁波』と『粒子線』の2種類に大きく分けられます。
電磁波には、X線、γ(ガンマ)線などが含まれます。
粒子線は、原子を構成する粒子がいろいろな速度で飛んでくるものです。α(アルファ)線、電子線、陽子線、炭素を代表とする粒子線、中性子線などがあります。

照射方法としては、
外部照射:一般的な方法で、外部から放射線を出す機器により照射される放射線をがんの病巣に照射する方法で、日を変えて複数回に分けて実施します。
内部照射:体内のがんの病巣近くに入れた容器から放射線を照射する方法。弱い放射線を継続して長期間にわたり照射します。

放射線治療においては照射される量の上限の関係から同一部位への照射を以前受けていた場合には再度の照射が出来ない事もあります。

がんが広範囲もしくは複数個所にある場合は、先進医療に含まれる重粒子線治療・陽子線治療を含む放射線治療単独だけでは難しい面もあります。

・先進医療について
「大学や病院、研究機関で開発された最新医療技術の中で厚生労働大臣が安全性と治療効果を認め、将来的に保険診療への導入が適切かを臨床の現場で評価する治療」を指します。
簡単にいうと、数ある新しい治療法の中で厚生労働大臣(厚生労働省)が指定したものです。
2022年1月1日現在、先進医療Aで24種類、先進医療Bで57種類と、適用も施設も極めて限定された治療です。

先進医療は患者が希望するだけで受けられるものではなく、対象となる医療機関・疾病の状態・治療法が合致したものでないと先進医療の扱いとはならず、医療保険等の特約で設定されている先進医療特約の対象も先進医療としての対象でなければ給付対象にはなりません。

先進医療は治療が目的ではありますが、将来的に健康保険の適用とするか否かの評価をおこなうことも目的としているのです。
代表例としては、放射線治療の一種である重粒子線や陽子線といった粒子線治療があります。
いずれも全額自己負担で、治療費自体も200~300万円と非常に高額になります。

・患者申出制度について
2016年4月からスタートした新しい制度です。
未承認薬などの新しい医療を併用して使用したい場合、従来は本来健康保険の対象になる部分も全額自己負担であったのを、患者からの申し出に基づき、医療機関が安全性・有効性などを確認したうえで、実施するか否かを判断します。
承認されれば、「健康保険の範囲を超えた部分」自体は全額自己負担となりますが、「健康保険の範囲内の診療」については健康保険の適用となり、自己負担が軽減されます。
 また、最近は医療保険やがん保険の特約(オプション)で、患者申出制度でのかかる費用全額をカバーするものが登場してきています。

・未承認薬について
健康保険適用の承認を受けていない薬剤で、全額自己負担となります。
多くは日本国内未承認も欧米では承認されている薬剤ですが、全額自己負担となり、かつ薬剤自体も非常に高額です。
少しずつですが国内でも承認されてきてはいますが、欧米で承認されているがん治療薬剤全体を100とした場合、日本国内承認の割合は40%弱になります。
一例)ブレクスカブタジェン アウトルーセル(再発または難治性の急性リンパ性白血病向け)
⇒1か月分の薬剤代:4788万円
ベルズティファン(腎細胞がん、中枢神経系血管芽腫、膵神経内分泌がん)
⇒1か月分の薬剤代:316.8万円
がんパネル検査により、がん遺伝子のタイプが判明し、効果が期待出来る薬剤があったとしても、必ずしも公的医療の対象の薬剤とは限らないといった新たな問題が出てきています。

・かかる期間
実際に治療をするとなった際に完治(寛解)するかどうか?が気になる一方、お金の心配と共に気になることは「どのくらい治療するのか?入院日数は何日なの?」ではないかと思います。
治療が長くなればおのずと経済的な負担と就業への不安が大きくなってきます。

当然ながらがんの部位や進行度合い、また手術方法や治療方法によって変わってきますが、
平均値としての入院日数は平成29年データでは『17.1日』です。
最長は青森県の24.1日、最短は香川県の14.3日と都道府県によって平均日数に違いはありますが、首都圏は患者数に対し病院ベッド数が少ないので入院日数の短期化が進んでいる傾向があります。
他の疾病と比較すると、循環器系の疾患で平均38.1日、精神疾患系で277.1日ですので、入院日数は実は思ったよりも短いともいえます。
また、過去と比較すると、平成8年では46.1日だったものが平成17年には29.6日と減少傾向にあります。

ただ治療期間全体が短くなったともいえない点として、外来受診回数は平成8年に比べ平成29年では1.4倍に増えているのです。

次に治療期間全体で見た場合、数か月単位となります。
一例として比較的長期間になる乳がんでみた場合、
入院して手術:2~4週間
退院後の化学療法(抗がん剤治療):6か月以上
退院後の放射線治療:1か月半
退院後のホルモン療法(投薬もしくは注射):5~10年
進行度合いにもよりますが、診断から治療を終えるまで数年単位になることも有り得ます。
また、会社員が休職中に受給出来る傷病手当金の受給期間でみた場合、
平均受給日数:179.64日(男性189.77日・女性166.13日)です。
比較対象として、
循環器系疾患:189.25日(男性191.75日・女性179.37日)
精神系の疾患:212.16日(男性213.79日・女性210.38日)
となっています。
この数字を比較してもがん治療は決して短期間ではなく長期間で病気と向き合わなければならないことがうかがえます。

もちろん退院後通院(もしくは短期入院)中において職場復帰も可能ではありますが、投薬による副作用の影響が懸念されます。ただ、それだけではなく現実問題の一つとして勤務先の理解の有無にもよります。
その点については国(厚生労働省)としても「企業による「従業員の疾患の早期発見・早期治療、重症化防止」、「理解のある職場風土の形成」、「時間単位の有給休暇制度や短時間勤務制度」、「柔軟な雇用管理」を推進しています。
職種によっては必ずしも罹患前と同じ仕事に戻れない可能性もありますが、治療期間中において仕事の心配をせずに済む環境になることを願うばかりです。

・かかる費用
がん保険(もしくはがん特約)が医療保険とは区別されていることからか、何かと金銭面で質問を受けることも多いのですが、本当に幾ら必要なのでしょうか?

まず公的医療での治療(手術・抗がん剤やホルモン剤治療・放射線治療)でみた場合ですが、
どんなに高額な医療費が掛かったとしても、がん治療においても『高額療養費制度(限度額適用認定証の事前取得の場合も含む)』は適用となるので、所得に応じて自己負担額上限があります。

・年収約1,160万円以上(標準報酬月額83万円以上)
252,600円+(医療費-842,000円)×1%
3か月以上(多数回該当):140,100円
最初の3か月:約26万円/月 4か月目以降:約14万円/月

・年収約770~1,160万円(標準報酬月額53万円以上83万円以下)
167,400円+(医療費-558,000円)×1%
3か月以上(多数回該当):93,000円
最初の3か月:約17万円/月 4か月目以降:約9万円/月

・年収約370~770万円(標準報酬月額28万円以上53万円以下)
80,100円+(医療費-267,000円)×1%
3か月以上(多数回該当):44,400円
最初の3か月:約9万円/月 4か月目以降:約4万円/月

・年収約370万円以下(標準報酬月額28万円以下)
57,600円
3か月以上(多数回該当):44,400円
最初の3か月:約6万円/月 4か月目以降:約4万円/月

・住民税非課税
35,400円
3か月以上(多数回該当):24,600円
最初の3か月:約4万円/月 4か月目以降:約3万円/月

以上の各所得に応じた上限金額に、高額療養費制度に含まれない入院中の食事代(病院食)として1食あたり460円(1日あたり1,380円)仮に1か月(30日)入院で41,400円がかかります。

例えば平均所得世帯といわれる年収約370~770万円でみると、最初の3か月間は毎月9万円+4万円=13万円、4か月目以降は毎月4万円+4万円=8万円かかることになります。
通院治療の場合、病院食代(月額約4万円)がかからない一方で往復の交通費が掛かります。
仮に1か月入院して、その後11か月間通院治療を受けた場合、合計で75万円となります。

それ以外にも、レンタルパジャマ・テレビ視聴用カード・購入した書籍等も考慮すべきですし、更に個室を利用した場合は、差額ベッド代(令和元年での1人部屋の平均金額は約8千円/日、医療機関によって異なります、全国で最高額は38万円/日、最低額は50円/日)が掛かります。
あくまで概算での目安にはなりますが、がん治療において公的医療による治療費・通院費などの交通費・その他の雑費を合計すると年間100万円かかると言われています。

自由診療と呼ばれる全額自己負担、保険証の対象外の治療を受けた場合は、高額療養費制度の対象外です。

 先進医療でもある重粒子線治療や陽子線治療を受けた場合、技術料だけで300万円前後かかりますし、国内未承認の薬剤を使った場合、例えば前述に記載した急性リンパ性白血病用の薬剤は1か月で4800万円、そこまで高額ではなくても国内未承認抗がん剤の8割は100万円/月以上です。

がんゲノム医療(遺伝子パネル検査、保険適用外の場合60万円前後かかります)で有効な治療方法が見つかったとしても自由診療による治療方法だった場合は更に大きなお金が掛かります。
がんを経験された方の中に「3か月で3千万円が無くなった」「がん治療の為に自宅を売却した」といった話も嘘ではないのです。
よく「がん治療はお金がある分だけ選択肢が多い」といいます。
医療コーディネーターの方から「一緒に最善の治療方法を探し、良い治療方法・病院・そして医師見つけたとしてもお金の問題から泣く泣く諦めた患者さんがいた」という話を聞きます。
がん保険(医療保険の特約)で大きながん診断一時金、または貯蓄性保険で三大疾病時でも大きな保険金給付があるもの、先進医療特約で備える方法があります。
また最近は患者申出制度での公的医療以外(自由診療)の部分の費用をカバーする保険(特約)も登場してきています。

・入ってこないお金について
どうしても出ていくお金に目が行きがちですが、決して短期ではない治療期間、治療期間中や治療期間終了後に今までのように仕事をこなせない事から収入が減少してしまいます。
原因としては勤務時間を短縮、休職(休職中は傷病手当金を受給)となったことです。
実際、就業者全体の約40%が減収となり、平均年収も診断前395万円から診断後167万円というデータがあります。

また、会社員の30%強、自営業の方の20%弱が失業・解雇・廃業をしています。
現役世代の場合は治療費の出費に目が行きがちですが、収入面でも大きな影響があります。
日々の生活費だけではなく、住宅ローン、お子様の教育費等に影を落とさないようにすることも重要です。

・まとめ
2人に1人は罹患し、3人に1人は死因となっているがん。
罹患率については高齢になるにつれ高くなり、逆にいえば若いうちに罹患する率は必ずしも高いとはいえません。
ただ、現役世代で罹患すると、治療費などの出費面・給与などの収入面で大きな影響を及ぼします。
死の病から治る病へと変わりつつあるものの、だからこそ経済面での影響が大きいといえます。
最初の診断時は公的医療で治療を行う方が大半ですが、再発時や転移時において、初診時よりも進行しているケースが多い事から自由診療を使いたい要望が高いといいます。

治療方法も入院の重要性は低くなり、通院治療の比重が年々高くなってきています。
多種多様な治療方法がある中で、経済的な問題もありますが、情報面でどれだけ正しい情報の選別・アドバイスを受けることができるか(医療機関・医師だけではなく保険会社の附帯サービスや医療コーディネーター等)も重要です。

保険も入院と手術ありきの内容から入院通院を問わない治療給付金と使い道を問わない診断一時金へ変わりつつあります。
また、減った収入をカバーする保障、老後への資産形成をしつつがんへの備えも出来るものが重視されてきています。

新商品販売に合わせて常に新しい保険に切り替える必要性は必ずしもないと思いますが、ご自身が加入している保険の保障内容と足りている部分、不足している部分は定期的に確認されることをお勧めします。
(以上)
 

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10年  年間相談件数: 250件

  所属:

株式会社ワールドフィナンシャル 東京第一支社

  住所:

東京都 中央区東日本橋3丁目9-15 グラニート丸絖ビル5階

 取扱い:

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相談内容:

生命保険の加入/見直し, 損害保険の加入/見直し, ライフプラン, セカンドライフプラン, 税金・節税対策, 相続対策, 事業承継, 資産運用, 法人コンサルティング

保有資格:

TLC (生保協会認定FP), 生命保険募集人, 損害保険募集人

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