【防災の日】千葉の大雨や熊本地震に学ぶ。家と車を守る火災保険・車両保険の正しい備え方と落とし穴
このたびの千葉県を中心とした大雨、ならびに熊本地震などの自然災害により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復旧・復興と、皆様の生活の安定をお祈りいたします。
2026年8月13日、千葉県では複数の市に大雨特別警報が発表され、これまでに経験したことのないような大雨となりました。また、2026年7月28日には熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の「令和8年熊本地震」が発生し、熊本県宇城市と氷川町で最大震度7を観測しています。気象庁は8月18日時点でも、地震活動が続いているとして注意を呼びかけています。
日本で暮らしている以上、大雨・台風・洪水・地震などの自然災害は決して他人事ではありません。
9月1日は「防災の日」です。
非常食や飲料水を備蓄する、避難場所や避難経路を家族で確認するといった「命を守るための防災」はもちろん重要です。
それと同時に考えておきたいのが、被災した後の生活を立て直すためのお金の備えです。
自宅が大きな損害を受けたり、家具や家電が使えなくなったり、通勤・生活に必要な車が水没したりすれば、生活再建にはまとまった資金が必要になります。
そこで確認しておきたいのが、
「火災保険の水災・家財補償」
「自動車保険の車両保険」
「地震保険」
の3つです。
ただし、「とにかく全部付ければ安心」という話ではありません。
住んでいる地域や住宅の状況、車の価値、ローン残高、預貯金などによって、必要な補償は一人ひとり異なります。
この記事では、大雨や地震などの自然災害に備えるために確認しておきたい保険のポイントと、意外と見落としやすい注意点について解説します。
判断材料1:大雨・台風リスクと「火災保険の水災・家財補償」
① 大雨や洪水に備えるなら「水災補償」を確認
「火災保険」という名前から、火事だけを補償する保険だと思っている方もいるかもしれません。
しかし現在の火災保険には、商品や契約内容によって、火災だけでなく風災・雪災・水災など、さまざまな自然災害による損害を補償するものがあります。
ただし、すべての火災保険で水災が自動的に補償されるわけではありません。
洪水や内水氾濫、豪雨などによる浸水被害に備えるためには、ご自身の契約に「水災補償」が付いているかを確認する必要があります。日本損害保険協会も、水災補償では河川の氾濫だけでなく、内水氾濫や豪雨等に伴う土砂災害などが補償対象となる商品があると案内しています。
「川から離れているから大丈夫」とは限りません。
短時間に大量の雨が降ることで下水道や排水設備の処理能力を超え、道路や住宅地に水があふれる「内水氾濫」が起こることもあります。
都市部や河川から離れた場所であっても、浸水リスクがゼロとは限らないのです。
水災補償は「浸水したら必ず支払われる」とは限らない
ここも重要なポイントです。
水災補償には、保険会社や商品、契約時期によって保険金の支払条件が定められています。
たとえば、床上浸水や一定以上の損害割合などを支払条件としている商品があります。
そのため、
「水災補償が付いているから、少しでも浸水すれば必ず保険金が出る」
というわけではありません。
具体的な支払条件については、保険証券だけでなく、契約している商品の約款や重要事項説明書なども確認しておきましょう。日本損害保険協会も、水災補償の内容や支払条件は商品によって異なるとしています。
② 見落としやすい「家財補償」
火災保険を確認するとき、建物だけに目が行きがちですが、もう一つ重要なのが「家財」です。
たとえば床上浸水が起きれば、建物の壁や床だけでなく、
冷蔵庫、洗濯機、テレビ、パソコン、家具、ベッド、衣類、食器など、日常生活に必要な多くの家財が損害を受ける可能性があります。
火災保険では一般的に、「建物」と「家財」は別々の保険の対象として契約します。
そのため、建物だけを保険の対象としていて家財を対象にしていない場合、家財の損害については原則としてその契約から補償されません。
家財を一度に買い直すとなれば、世帯人数や家族構成、所有している家財によっては大きな金額になります。
「建物の保険金額はいくらか」だけでなく、
「家財も保険の対象になっているか」
「家財の保険金額は現在の生活実態に合っているか」
まで確認しておくことが大切です。
水災補償を考えるときは保険料とのバランスも重要
水災補償を付ければ、その分だけ補償範囲は広がりますが、保険料にも影響します。
現在の火災保険参考純率では、建物の所在地などによる水災リスクの違いを保険料率に反映する仕組みが導入されています。実際の保険料は、所在地だけでなく建物構造、補償内容、保険会社の商品設計などによって異なります。
大切なのは、
「水災補償は高いから外す」
「心配だからとりあえず付ける」
のどちらかで決めるのではなく、ハザードマップや周辺の地形、過去の浸水履歴、預貯金なども含めて判断することです。
判断材料2:車の水没リスクと「自動車保険の車両保険」
大雨や洪水による道路冠水では、自宅だけでなく自動車にも大きな損害が発生する可能性があります。
特に地方や郊外など、通勤・買い物・子どもの送迎などに車が欠かせない家庭では、車を失うことが生活そのものに大きな影響を及ぼします。
日本損害保険協会も、2026年8月13日からの大雨に伴う災害について、車両保険を含む各種損害保険で風水災による損害を補償するものがあると案内しています。
① 洪水による車の水没は車両保険の対象になる?
一般的な車両保険では、台風・洪水・高潮などによる車の損害は補償対象となります。
車両保険には、幅広い事故を補償するタイプと、補償範囲を限定して保険料を抑えたタイプがあります。
日本損害保険協会の案内では、「一般的な車両保険」と補償範囲を限定した「車対車+A」のいずれについても、台風・洪水・高潮による損害が補償例として示されています。
ただし、保険会社や商品によって補償範囲や名称は異なります。
「エコノミータイプだから水害は出ない」と決めつけるのではなく、自分の契約内容を確認することが重要です。
② 水没した車が「全損」と判断されることもある
車が深く水に浸かると、エンジンや電子制御装置などに大きな損害が発生することがあります。
修理が困難な場合だけでなく、修理費が車の保険価額を上回る場合などにも「全損」と判断されることがあります。
車両保険で全損となった場合には、契約内容に基づいて車両保険金が支払われます。
また、通常は免責金額(自己負担額)を設定している契約でも、全損の場合には免責金額を差し引かずに保険金が支払われるのが一般的です。
さらに、商品によっては「全損時諸費用」などの保険金・特約が用意されている場合もあります。
ただし、その金額や支払条件は保険会社・商品によって異なるため、
「全損なら必ず車両保険金に一定割合が上乗せされる」
と考えるのは避けましょう。
③ 注意したい「車を失ったのにローンが残る」リスク
特に確認しておきたいのが、ローンで車を購入している場合です。
車が水没して使えなくなったとしても、それだけで自動車ローンの返済義務がなくなるわけではありません。
車両保険に加入していない場合、
「車は使えないのにローン返済は残っている」
という状況になる可能性があります。
さらに生活上どうしても車が必要であれば、新たな車の購入費用も必要になります。
一方、車両保険に加入していれば、契約内容に応じて受け取った保険金を、ローン残債の返済や次の車の購入資金などに充てられる可能性があります。
ただし、ここにも注意点があります。
車両保険金額よりローン残高の方が多ければ、保険金だけでローンを完済できるとは限りません。また、所有権留保などがある場合には、保険金の受取方法や車両の処分について信販会社等との手続きが必要になることもあります。
そのため、
「ローンがある=必ず車両保険に入るべき」
と一律に判断するのではなく、
「現在の車の価値はいくらか」
「ローンはいくら残っているか」
「車を失ったとき自分の預貯金で買い替えられるか」
を確認して、車両保険の必要性を判断しましょう。
④ 水害で車両保険を使うと等級はどうなる?
個人の一般的なノンフリート契約では、台風・洪水・高潮などによって車両保険を使用した場合、通常は「1等級ダウン事故」となります。
翌年度に1等級下がり、事故有係数適用期間が1年間加算されるため、その後の保険料に影響する可能性があります。
そのため、損害額が比較的小さい場合には、
「保険を使った場合の受取額」と
「翌年度以降に増える保険料」
を比較してから請求するかどうかを検討することも大切です。
判断材料3:熊本地震から考える「地震リスク」
2026年7月28日に発生した「令和8年熊本地震」では、マグニチュード7.1、最大震度7を観測しました。
熊本ではその10年前の2016年にも、「平成28年(2016年)熊本地震」が発生しています。
2016年4月14日にはマグニチュード6.5、最大震度7の地震が発生し、その約28時間後の4月16日にはマグニチュード7.3、最大震度7の地震が発生しました。
同一観測点で震度7を2度観測したのは、当時、気象庁の観測史上初めてのことでした。
この2016年熊本地震では古い住宅を中心に大きな被害が生じた一方、2000年以降に建てられた木造住宅でも倒壊例は確認されています。
ただし、国の調査では2000年以降の木造建築物はそれ以前の建物と比較して倒壊率が低く、現行規定に沿った接合部仕様などが倒壊・崩壊防止に有効だったと評価されています。
したがって、
「新しい耐震基準の住宅でも簡単に倒壊する」
という理解は適切ではありません。
耐震性能を高めることは非常に重要ですが、それだけですべての地震リスクをなくせるわけではない、と考えておくのがよいでしょう。
① 地震による損害は通常の火災保険では原則対象外
地震に備えるうえで、非常に重要なポイントがあります。
通常の火災保険では、
地震・噴火、またはこれらによる津波を原因とする建物・家財の損害は、原則として火災保険の損害保険金の補償対象になりません。
たとえば、
地震の揺れによって家が倒壊した場合だけでなく、
地震を原因として火災が発生した場合や、地震による津波で住宅が流失した場合についても、通常の火災保険だけでは補償されません。
こうした損害に備えるために用意されているのが「地震保険」です。
ただし、火災保険の商品によっては、地震による火災について「地震火災費用保険金」などが支払われる場合があります。
これは地震保険そのものとは異なり、支払条件や金額にも制限があります。
そのため、
「地震なら火災保険から1円も出ない」
と一律に考えるのではなく、自分の契約にどのような費用保険金や特約が付いているかを確認してください。
② 地震保険は「家を完全に建て直すための保険」ではない
地震保険は、単独では契約できず、火災保険とセットで契約します。
地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の**30%~50%**の範囲で設定します。
さらに上限があり、
建物は5,000万円、家財は1,000万円までです。
たとえば建物の火災保険金額が2,000万円なら、地震保険の保険金額は600万円~1,000万円の範囲となります。
「それでは家を完全に建て直せないのでは?」
と思うかもしれません。
そのとおりです。
地震保険は、被災した建物を完全に元どおりにすることを目的とした保険ではありません。
法律上の目的は、**「地震等による被災者の生活の安定に寄与すること」**です。
つまり、被災直後の生活費や仮住まい、住宅ローンへの対応、生活再建などに必要な資金を確保するという役割を持っています。
③ 地震保険は実際の修理費をそのまま支払う仕組みではない
もう一つ知っておきたいのが、地震保険独特の支払方法です。
2017年1月1日以降に保険期間が始まった地震保険では、損害の程度を、
「全損」
「大半損」
「小半損」
「一部損」
の4区分に認定します。
その区分に応じて、地震保険金額の100%・60%・30%・5%が支払われます。それぞれ時価額を基準とした上限があります。
つまり、
「修理に300万円かかったから300万円支払われる」
という実損払いの仕組みではありません。
この点は通常の火災保険との大きな違いなので、あらかじめ理解しておきましょう。
④ 国が関与しているから「どんな地震でも無制限に支払われる」わけではない
地震保険は、政府と民間の損害保険会社が共同で運営する制度です。
民間だけでは負担することが難しい巨大地震のリスクに対し、政府が再保険によって支払いをバックアップしています。
一方で、保険金の支払いが無制限に保証されているわけではありません。
現在、1回の地震等について、民間責任分と政府責任分を合わせた総支払限度額は12兆円とされています。
この限度額は、関東大震災クラスの巨大地震にも対応できる水準として設定されています。
したがって、
「国が付いているから巨大地震でも必ず満額が支払われる」
という説明ではなく、
「政府の再保険によって巨大地震にも対応する仕組みが設けられている」
と理解するのが正確です。
⑤ 耐震性能による割引制度もある
地震保険には、建物の耐震性能などに応じた割引制度があります。
建築年割引、耐震診断割引、耐震等級割引、免震建築物割引などがあり、条件に応じて10%~50%の割引が適用されます。
たとえば、一定の要件を満たす耐震等級3や免震建築物では50%の割引が設定されています。
住宅を購入・建築したときの資料を保管している場合は、適用できる割引がないか確認してみましょう。
災害に遭ったときに覚えておきたい3つの注意点
1.片付ける前に被害状況を写真・動画で残す
自宅が浸水した場合、できるだけ早く片付けたくなると思います。
ただし、安全を確保したうえで可能であれば、清掃や廃棄を行う前に被害状況を写真や動画で記録しておきましょう。
家全体の状況、浸水した高さ、損傷した壁や床、被害を受けた家財などを複数の角度から撮影しておくと、事故状況や損害内容を保険会社に伝えやすくなります。
ただし、人命・安全が最優先です。
危険な場所に戻ったり、無理に撮影したりする必要はありません。
2.「台風による水没」と「地震・津波による水没」は自動車保険の扱いが違う
車両保険では、台風・洪水・高潮などによる水没は一般的に補償対象となります。
一方で、地震・噴火またはこれらによる津波によって生じた車両の損害は、通常の車両保険では原則として補償対象外です。
保険会社によっては地震・噴火・津波による車両の全損などに対応する特約を用意している場合がありますが、補償内容や支払条件は商品によって異なります。
海岸付近など津波リスクのある地域にお住まいの場合は、車両保険だけでどこまで備えられているのかも確認しておきましょう。
3.「保険金申請を代行します」という業者には注意
自然災害の後には、
「火災保険を使って無料で修理できます」
「保険金請求を代行します」
と勧誘する住宅修理業者や保険金請求サポート業者とのトラブルが発生しています。
日本損害保険協会は、こうした業者と先に契約してしまうことで、保険金が支払われなかった場合に修理費を自己負担することになったり、解約時に高額な手数料を要求されたりするケースがあるとして注意を呼びかけています。
また、経年劣化など本来保険事故ではない損傷を、台風や災害によるものとして虚偽申請することは絶対に避けなければなりません。
被害を受けたら、まず加入している保険会社や担当している保険代理店へ連絡しましょう。
なお、保険金の支払い可否を最終的に判断するのは保険会社です。
まとめ:防災の日を機に「保険証券の棚卸し」を
自然災害そのものを保険で防ぐことはできません。
しかし、災害が起きた後の経済的なダメージを小さくし、生活を立て直すための資金を準備することはできます。
2026年8月の千葉県を中心とした大雨、そして2026年7月の令和8年熊本地震は、自然災害への備えを改めて考えるきっかけとなりました。さらに2016年の熊本地震からも、住宅の耐震化だけでなく、被災後の生活再建まで含めて備える重要性を学ぶことができます。
9月1日の「防災の日」を機に、次の3点を確認してみてください。
- 自宅の大雨・浸水リスク:火災保険に水災補償と必要な家財補償が付いているか
- 車の水没リスク:車両保険の補償範囲、現在の車の価値、ローン残高がどうなっているか
- 地震による生活再建リスク:地震保険に加入しているか、建物だけでなく家財にも地震保険が付いているか
そして最も重要なのは、保険料だけで判断しないことです。
保険は、すべてのリスクを補償すればよいというものでもありません。
ハザードマップ、住宅の構造、家族構成、預貯金、住宅ローンや自動車ローンの残高などを踏まえて、
「自分で負担できるリスク」と
「保険に移しておきたいリスク」
を整理することが大切です。
「契約したのが何年も前で、今の補償内容がよく分からない」
「水災補償が付いているかわからない」
「地震保険が建物だけなのか、家財にも付いているのかわからない」
という方は、防災の日を一つのきっかけとして保険証券を確認してみてはいかがでしょうか。
わからない部分があれば、加入している保険会社や担当する保険代理店、ファイナンシャルプランナーなどに確認し、現在の生活環境に合った備えになっているか整理しておきましょう。

